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テクニカルライブラリー

 海外事例まとめ

▼目次
米国
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米国

1.概況
 北米の電力供給における信頼性や品質が欧州や日本と比べると劣っている(日本の年間平均予測停電時間は数分であるのに対して、米国では数時間にもなる。1)ことに起因して、米国のマイクログリッド研究は電力の安定供給問題に対応することが最大の目的となっている。そのため、マイクログリッドの導入目的は、系統電力の中断または電力不足が起きた場合に連続的に自立運転へ移行し、系統電力が復帰すれば再連系できるシステムの導入であり、無停電電源装置(UPS)導入と同じものとなる。一方で、気候変動問題への関心が高まる中で、米国でもマイクログリッドによる環境保全対策(例:再生可能エネルギー発電の普及拡大)を目指すようになってきた。
 米国ではエネルギー省(DOE)を中心にマイクログリッドの開発支援が行われており、CERTSが最も有名な開発者である。CERTSはCEC(California Energy Commission:カリフォルニア州エネルギー委員会)からも資金提供を受けており、オハイオに60kWの発電設備などをもつ実験設備を構築してソフトとハードを同時に開発しているということが特徴的である。その他、ノーザン・パワー・システムズ社やCEIDS(Consortium forElectric Infrastructure to Support a Digital Society)、GE(ゼネラル・エレクトリック社)などで研究が進められている。
 更にDOEは新たに9つのマイクログリッドプロジェクトを立ち上げた。これは、昼間のピーク負荷の15%以上を分散型電源で削減することを主要な目的としてスタートしたものである。
 米国の主な研究事例を図表2-1に、DOE新規プロジェクトを図表2-2に示す。
 

図表2-1 米国におけるマイクログリッドの主な事例
出典:各種資料より(株)三菱総合研究所作成
 
図表2-2 DOEの新規マイクログリッドプロジェクト
出典:Kythnos 2008 Symposium on Microgrids 資料より(株)三菱総合研究所作成
https://building-microgrid.lbl.gov/symposium/kythnos-2008-symposium-microgrids

1 エネルギー・資源(Vol.29、No.1、2008)

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2.CERTS 2 3 4

① 目的
 CERTSマイクログリッド(CM)の研究は、分散型電源のプラグ&プレイのための弾力的なプラットフォームを提供し、排熱や自然変動電源を用い、ローカルな電力供給の強靱性と信頼性を高めることにより、分散型電源の大量導入が可能な成熟したシステムアプローチを創造することを目的として行われている。

② 内容
 CMは他のマイクログリッドと同様に、通常の電力供給が中断された場合には解列して、受容可能なレベルに復旧するまで、重要負荷にはグリッド内の分散型電源から供給を継続する。高価で高速な電気的制御や固有のエンジニアリングを必要とせず、比較的小規模(ピーク需要2MW以下)のエリアに電力供給機能を提供する。中央制御方式ではなく、それぞれの装置がPeer-to-peerでコントロールすることから、強靭なシステムを構築できる。
 CMの発電機の運転は、ローカルな周波数と電圧に反応するパワーエレクトロニクス(以下、パワエレと略す)機器によって制御されており、直流電源などのインターフェースが必要となる。品質別電力供給が可能な設計(それぞれの配電線回路により信頼性が異なる)のため、系統の状態や経済性の事情によって負荷を分離できる非常に高速なスイッチが必要となる。切り離された回路は、他の回路が許容された電力品質に復帰するまでは意図的に自立運転を行う。1箇所のPCC(Point of Common Coupling、系統接続点)を適応しており、商用配電系統への逆潮流は行わない。
 2006年11月からオハイオのAEPサイトで60kW×3台のガスエンジンと模擬負荷でマイクログリッドを構成し、次のような試験を行っている。
  ▶シームレスな連系/自立運転の切り替え
  ▶高品質電力供給
  ▶システム保護
  ▶装置の応答速度試験
  ▶特異負荷状況での運転
  ▶自動負荷追従
 

図表2-3 AEP/CERTS Microgrid 試験設備と回路図

 
 またプロジェクト全体では、実際の電気機器だけでなく、マイクログリッドを普及するために必要なツールを研究しており、ジョージア工科大学が開発しているマイクログリッド分析ツールやバークレー研究所と他の海外研究開発機構で使用されているDER-CAM(Distributed Energy Resources Customer Adoption Model:分散型エネルギー資源顧客採用モデル)がある。DER-CAMは施設のエンドユーザー向けエネルギーサービスのためのオンサイト電源の最適な組合せを導出でき、コージェネレーション、蓄電・蓄熱の解析も可能で、更に電力品質と信頼性の問題の解析へと機能を拡張しつつある。

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③ 今後の取組
 AEPサイトでは、2008/2009 年にかけて、次のような試験を行う予定となっている。
  ・CM システムへの様々な種類の分散型電源の統合
  ・産業部門での2つのフィールドプロジェクト
  ・再生可能エネルギーと電力貯蔵装置の統合、逆潮流の検討
 またカリフォルニア州 Santa Rita Jailで、大規模なエネルギー貯蔵装置と再生可能エネルギーによるマイクログリッドの実証試験が行われる。
 

図表2-4 Chevron USA(CERTS)の実証試験サイトと設備構成
 


2 エネルギー・資源 (Vol.29、No.1、2008)
3 IEEE power&energy (Vol.6、No.3、May/June2008)
4 Kythnos Symposium on Microgrids 資料 (https://building-microgrid.lbl.gov/symposium/kythnos-2008-symposium-microgrids

3.IEEE での基準化5 6 7
 IEEE(米国電気電子学会)規格調整委員会21は、設計・運用・電力系統と自立分散型電源の統合化のためのIEEE 1547.4ガイドラインの草案作成を支援している。この検討会の主査はNREL(The National Renewable Energy Laboratory:国立再生可能エネルギー研究所)の研究者が務め、最新では2008年7月に50ページ超にわたるDraft5が策定され、8月に最終ミーティングが開かれている。
 このガイドラインは、地点や地域の電力システムに連系されたマイクログリッドまたは自立分散型電源群を対象としており、マイクログリッドの設計・運用・統合化のための新たな手法や事例を提供し、電力システム設計者・運用者・インテグレータ・機器メーカー等に使用されることを目的としている。このガイドラインの実現によって、電力システム信頼性が向上すると共に、IEEE1547-2003の系統連系技術要件に基づいて、分散型電源の利用価値が更に拡大することが期待される。

注)日本ではすでに系統連系技術要件が整備されているものの、高圧連系の場合における分散型電源の自立運転に関する技術要件は含まれていない。また、複数需要場所を自営線を介して接続し一括して系統連系させる形態は、今のところ考慮されていない。

5 エネルギー・資源 (Vol.29、No.1、2008)
6 IEEE power&energy (Vol.6、No.3、May/June2008)
7 IEEE SCC21 Website (http://grouper.ieee.org/groups/scc21/1547.4/1547.4_index.html

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