• HOME > ライブラリー > テクニカルライブラリー『マイクログリッド/海外事例まとめ(欧州)』

テクニカルライブラリー

欧州

1.概況 8 9 10
 EUでは、エネルギーの上流から最終需要までのエネルギーチェーンを最適化するスマートグリッドプラットフォームの一環として分散型電源の活用が位置づけられている。分散型電源は、欧州共通の統一電力市場を発展させる上でも重要な役割を果たしており、更に、一部の電力系統に障害が起こった場合でも継続的に電力を供給することを可能にする。基本的にマイクログリッドは配電系統と独立するのではなく、むしろ協調して将来の能動的な配電系統の一部を構成する役割を期待されている。

 欧州におけるマイクログリッドの研究は、EU加盟国内の企業、研究機関、及び大学等で分散して実施されている。第5次フレームワークプログラム(FP)での「Microgrids: Large Scale Integration of Micro-Generation to Low Voltage Grids」プロジェクト(2003-2005)、第6次FPでの「More Microgrids: Advanced Architecture and Control Concepts for More Microgrids」プロジェクト(2006-2009)で、ドイツやギリシャ、イタリア、オランダなどで実験サイトによる研究が進められている。

 第5次FPでのMicrogridsプロジェクトは、二酸化炭素排出の削減、電力品質の向上、安定供給、コストの削減などを目指し、分散型電源の低圧系統への大規模な統合を扱ったプロジェクトである。系統への連系運転を基本に、電力系統に障害が生じた場合には自立運転も可能なシステムコンセプトである。

 第6次FPでのMore Microgridsプロジェクトは、Microgridsプロジェクトの後継プロジェクトとして実施されている。More Microgridsプロジェクトでの研究目的は以下のとおりである。
 ・マイクログリッドの効率的な運転を可能とするマイクロ発電装置やエネルギー貯蔵、ロードコントローラーの研究
 ・代替制御方式の開発(集中vs 分散、次世代情報通信技術の活用)
 ・代替的なネットワークデザイン(最新の保護機能、最新のインターフェース、可変周波数での運用)
 ・複数マイクログリッドの技術的・商用的な統合
 ・代替制御方式での多くの実地試験(連系運転、自立運転、両者の移行時における実験検証など)
 ・技術的・商用的プロトコルやハードウェアの標準化(分散型電源のプラグアンドプレイを可能とするもの)
 ・電力システム運用への影響分析(地域・EUレベルでの、信頼性、ネットワーク損失、環境価値などのマイクログリッドの利点の定量化)
 ・電力ネットワークインフラの開発の影響分析(マイクログリッドが、EUの老朽化した電力インフラの補強/リプレイスに与える利点の定量化)

 MoreMicrogridsプロジェクトでは、地域、産業、商業施設といった計7つの様々な場所に実際のマイクログリッドを導入し、異なる運転モードで試験をし、次の事柄を検証している。
 ・連系運転/自立運転の実証
 ・連系運転と自立運転の移行の実証
 ・集中制御方式と分散制御方式の評価
 ・先進的な電力機器のインターフェース(知的負荷スイッチやスマートバッテリー貯蔵装置)の実証
 

図表2-5 MoreMicrogridsの実証試験サイト


8 http://www.microgrids.eu/default.php
9 http://cordis.europa.eu/
10 Kythnos 2008 Symposium on Microgrids 資料 (https://building-microgrid.lbl.gov/symposium/kythnos-2008-symposium-microgrids

 

▲PAGE TOP


2.MoreMicrogridsの実証試験事例 11 12 13
① LABEIN's Commercial feeder(スペイン)
【概要】
 ・様々な電力貯蔵装置を有する実証研究
【目的】
 ・系統連系下での、中央制御方式/分散制御方式の試験
 ・電力取引も含む、通信プロトコルとコンポーネントのテスト
 ・エージェントソフトウェアによる制御戦略 など
【設備】
 ・1000 kVA、451kVAの変圧器を介して、30kVの系統に接続
 ・太陽光発電5.8kW、風力発電6kW、ディーゼル2×55kW、マイクロタービン50kW
 ・フライホイール250kVA、電気二重層コンデンサ2.18MJ(5kW×5分)、蓄電池1120Ahと1925Ah
 ・抵抗負荷55kW、150kW 誘導負荷2×36kVA
 

 

 

 

表2-6 研究設備


② Kythnos Microgrid(ギリシャ)
【概要】
 ・Kythnos島というギリシャの離島での、完全独立系統での実証
【目的】
 ・独立系統での実証試験、可能最大発電電力やシステム信頼性の改善のための出力複数のマスターコントロール方法の開発が目的
【設備】
 ・太陽光発電10kW、ディーゼル9kVA、鉛蓄電池53kWh(さらにモニタリングと通信用に太陽光発電2kWと蓄電池32kWhを別置)
 ・12軒の別荘に電力供給
【研究内容】
 ・自立運転モードの厳しい条件をクリアするため、次世代インバーターを導入
 ・5kWの風力発電の導入
 ・システム性能の1年間のモニタリングと分析
 ・分散制御のためのソフトウェアの導入
 ・知的ロードコントローラーの機能の実証
 

図表2-7 プロジェクト全景
出典:Microgrids; An Overview of Ongoing Research, Development, and Demonstration Projects, IEEE, July/August

 

▲PAGE TOP

 
③ EDP's Microgeneration facility(ポルトガル)
【概要】
 ・スイミングプールを有するビルでの、ポルトガル初のマイクロガスタービンを接続した実証研究
【目的】
 ・マイクロコージェネレーションを連系した低圧のマイクログリッドの試験、連系運転、自立運転試験とその切り替え試験
【設備】
・マイクロガスタービン80kW

④ Continuon's MV/LV facility(オランダ)
【概要】
 ・ホリデーパーク内の108のコテージに設置された合計315kWの太陽光発電を用いた実証
【目的】
 ・太陽光発電と負荷(コテージ)とのアンバランスにより生じるフィーダー末端での電圧上昇や電圧ひずみの解消
 ・電力貯蔵システムの容量分析
 ・制御や調整要因が蓄電池の寿命や充放電効率などに与える影響分析
 ・24 時間の自立運転、連系/自立運転の自動切り替え
 ・ブラックアウトスタートの実証 など
【設備】
 ・太陽光発電(315kW)、蓄電池、ピーク負荷150kW
 

図表2-8 導入システムと系統図
 

▲PAGE TOP

 
⑤ Residential Area „Mannheim-Wallstadt“(ドイツ)
【概要】
・住宅地での配電系統への太陽光発電他の多数台連系を想定した研究。需要家の意識変化や、社会経済的な分析も実施
【目的】
・マイクログリッドの社会経済的分析、各機器による分散制御、自立運転試験などが目的
【設備】
・太陽光発電23kW、60kW×3時間の鉛蓄電池、マイクロコージェネレーション(1.2kWe、8kWth)、10kW程度の暖房負荷
 

図表2-9 導入設備


⑥ CESI RICERCA DER Test Facility (DER-TF)(イタリア)
【概要】
 ・800kVAの変圧器で中圧系統に接続された、低圧系統でのマイクログリッド
 ・直流マイクログリッドの研究を含む
【目的】
 ・動的挙動の試験、定常状態での計画的な自立運転での電力品質の分析、発電機特性のテスト(異なる系統トポロジーが可能)など
 ・2008年末までに、低圧の直流マイクログリッドが導入され、メインのマイクログリッドに連系される
【設備】
 ・発電出力は合計350kW、熱出力は250kW
 ・発電機:太陽光発電24kW+鉛蓄電池、ディーゼル7kVA、風力8kVA、太陽熱駆動スターリングエンジン10kW、バイオマス燃料でのコージェネレーション(10kWe、90kWth)、マイクロガスタービン105kW
 ・電力貯蔵:レドックスフロー電池(42kW、2時間)、鉛蓄電池(100kW、1時間)、高温ゼブラ電池(64kW、30分)、フライホイール(100kW、30秒)
 ・負荷:誘導・抵抗負荷(100kW、70kVAR)、容量性負荷(150kVAR)

 

図表2-10 設備概要

▲PAGE TOP


⑦ Bornholm Microgrid(デンマーク)
【概要】
 ・デンマークのBornholmという離島での島全体を使ったマイクログリッドの実証
【目的】
 ・マルチマイクログリッドのコンピュータモデルの確立
 ・需給の予測関数の確立
 ・マルチマイクログリッドの運転シミュレーション
 ・無効電力制御方法の研究
 ・シミュレーションと計測結果の評価
 ・連系/自立の移行手順の実証 など
【設備】
 ・風力発電30MW、ディーゼル発電39MW、汽力発電76MW、ピーク負荷55MW、スウェーデンと海底ケーブルでつながっている
 

図表2-11 実証研究サイト
 
図表2-12 需給カーブ
出典:Technical University of Denmark 資料


⑧ Kozuf Microgrid(マケドニア旧ユーゴスラビア共和国)
 ・羊舎への再生可能エネルギーによる電力供給プロジェクト
 ・バイオガスと太陽光による発電を行っている
 ・現状は系統から独立しているものの、35kVの電線が2007年夏にできる予定であり、その後羊舎は系統に接続される

11 http://www.microgrids.eu/default.php
12 Nagoya 2007 Symposium on Microgrids 資料 (https://building-microgrid.lbl.gov/symposium/nagoya-2007-symposium-microgrids
13 Kythnos 2008 Symposium on Microgrids 資料 (https://building-microgrid.lbl.gov/symposium/kythnos-2008-symposium-microgrids

  NEXT >>> その他の地域