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テクニカルライブラリー

目次にそって解説!Global Smart Grid Federation「系統用蓄電池に関する白書」

<目次>
1.エネルギー貯蔵の必要性
  -ワークグループ設立背景
  -白書の構成
2.事例紹介
  -周波数調整
  -再生可能エネルギー統合
  -マイクログリッド
  -負荷平準化/ピークシフト
  -電圧調整
3.ビジネスケース
  -現在事業性を伴ったビジネス
  -将来のビジネスチャンスに関する展望
  -蓄電池市場の今後の展開
4.結論

1.エネルギー貯蔵の必要性                                          
蓄電池は、電力貯蔵の観点で、充放電の反応の速さ、どのような規模でも同じような機能を実現できる点、設置の際の地理的制約の少なさ、リードタイムの短さなどから、電力系統での利用において特に注目が集まっている。白書では、蓄電池を系統で利用する際に期待される用途と事例、中でも既に経済性を伴う用途と事例を取り上げ、さらに今後の制度の変更が蓄電池市場の拡大に与える影響を検討している。

2.事例紹介                                                 
系統利用における蓄電池の用途として、(1)周波数調整、(2)再生可能エネルギー統合、(3)マイクログリッド、(4)負荷平準化/ピークシフト、(5)電圧調整が挙げられる。

(1)周波数調整
・電力系統の需給バランスによって変動する周波数を、適正値域に維持するためには、発電量や消費量を随時一致させる必要がある。この調整には俊敏な対応が必要であり、充放電の反応が早い蓄電池は、こうした周波数調整に適している。
・事例:米国では例えばAES CorporationがNEC製の蓄電池を用いて周波数調整サービスを提供している。蓄電池を変電所に設置し、同時に風力発電による出力変動の平準化も行っている。

(2)再生可能エネルギー統合
・再生可能エネルギーによる出力変動は予測が困難なため、電力需給の不一致が生じる。蓄電池を発電源付近に設置し、その発電の出力変動を平準化すれば、系統の連系先への影響を低減でき系統連系が容易になる。加えて、出力の予測性も向上するため、発電事業者から見れば収益の予測が容易になり、事業性の説明が確かになり投資が見込まれるようになる。
・事例:イタリアの系統運用者ENELは、NEC製のリチウムイオン蓄電池を変電所に実証的に導入している。米国ニューメキシコでの実証では、NEDOがマイクログリッド内に蓄電池を導入し、蓄電池単体での必要最低容量と、デマンドレスポンスや小型ガスエンジン併用時の蓄電池の必要最低容量を分析している。再生可能エネルギー統合用途での蓄電池は高価だが、デマンドレスポンスや小型ガスエンジンの併用によって、必要最低容量を引き下げられることが示された。

(3) マイクログリッド
・マイクログリッドとは、発電源や分散型リソースを含む小規模な電力系統で、中央の電力系統につながっていても切り離されていても、運用・制御可能なものである。
・離島などの小規模な電力系統では、蓄電機能を有するマイクログリッドの導入により電力供給がより安定になり、再生可能エネルギーの導入量を増やせる。また、大規模系統でも、災害時に特定区間を単独運転できるようにするためのマイクログリッドに注目が集まっている。
・事例(離島):宮古島では、NaS蓄電池とリチウムイオン蓄電池を導入し、太陽光発電の出力平準化・予測性の向上と周波数調整用途に活用している。
・事例(災害用途):米国Duke Energyでは、消防署などの信頼度の高い電源が必要な需要家に対して、災害時には再生可能エネルギーと蓄電池を用いて単独運転できるような仕組み(マイクログリッド)の可能性を実証しているところである。

(4) 負荷平準化/ピークシフト
・蓄電池を導入することで、設備におけるピーク需要を平準化できるため、その増設などの設備投資を遅らせるまたは回避することができる。既にいくつかの地域では、変電所の更新に代わる経済的な方策として、蓄電池が導入されている。
・事例:米国カリフォルニア州では、リチウムイオン蓄電池を変電所に設置し、ピーク需要時に併用している。また、フランスでは、そのような変電所でのピークシフトの実証試験を実施している。

(5) 電圧調整
・太陽光発電などの分散電源が配電網の特定の場所で稼働すると、その部分の電圧が上昇してしまい、配電網の電力供給に不具合が生じる。分散電源の出力制御による対応も可能だが、別の解決策として、蓄電池を発電源付近に設置し、一時的に出力を吸収させる方法がある。
・事例:米国デトロイトでは、Detroit Edison Energyによって、電柱の変圧器に導入された蓄電池によって、太陽光発電を行う需要家や、小規模の電力供給を行っている需要家に対して、複数サービスを提供している。主な機能は電圧調整であるが、ピークシフトやバックアップ電源も提供サービスの一部である。

3.ビジネスケース                                              
(1) 現在事業性を伴ったビジネス
・蓄電池の用途の中にも、既に経済性を伴って成立しているものがある。たとえば、米国PJMの周波数調整市場には蓄電池が既に参入しており、豪州クイーンズランドでは設備更新よりも経済的な代替策として、蓄電池による遠隔地の配電線の負荷のピークシフトが行われている。

(2) 将来のビジネスチャンスに関する展望
・再生可能エネルギーの普及により、これまで以上に俊敏な反応が可能な電源が求められる中、そうした速い反応に対応できるといった蓄電の経済価値を反映した、正当なインセンティブを付与する制度を整備することが、蓄電池市場の拡大において重要である。
・米国PJM 地域では、周波数調整サービスの支払い方式に関するPay For Performance制度が導入され、調整シグナルに対する応答の精確性が支払対価に反映されるようになった。蓄電池の有する素早い反応性により、他のリソースに対する優位性が向上し、蓄電池市場が拡大している。
・アイルランド・北アイルランドでは、風力発電が大量に普及していることから、短期的な変動に追随できる高い反応性を有する蓄電池にとって有利なインセンティブが周波数調整市場に設けられる予定である。
・系統運用者による蓄電池の直接所有が法的に認められていない地域は多い。こうした規制の改正も蓄電池の普及促進において求められる。
・新たな動きとして米国ではニューヨークやカリフォルニアなど、州単位で、蓄電池を電力システム内でどのように位置づけるかなどの市場構造に関する見直しが行われている。
・蓄電池の用途を組み合わせ、複数収益源を確保すれば、蓄電池の経済性は向上する。しかし、蓄電池は電力市場の従来の分類(発電源・需要側負荷など)に当てはめることが難しいため、蓄電池が提供できる機能は、現在の制度上限られてしまっている。蓄電システムを新たな分類として創設する動きもあるが、実現には至っていない。このように、蓄電池が複数の用途を電力市場に提供できるよう、制度を変更することが、蓄電池の経済性の向上につながる。

(3) 蓄電池市場の今後の展開
・現状最も経済性が高い蓄電池の用途は周波数調整である。蓄電池の参入は本市場が先駆けとなり、次にピークシフトへの参入が予想される。しかし、両市場の規模には限りがある。
・マイクログリッドや再生可能エネルギー統合市場への参入は、蓄電池のコストダウンを経て、最終段階になると予想される。再生可能エネルギー統合市場は、各発電サイトでの需要が見込まれるため、非常に大規模な潜在市場である。

4.結論                                                   
・再生可能エネルギーによる分散電源の導入促進により、需給バランス維持がより困難になることが予想される系統運用において、蓄電池はその安定運用に資する重要な資産である。蓄電池は一般的に高価であると捉えられているが、既に経済性を伴う用途も存在する。一方で、電力系統における蓄電池の導入を促進するためには、様々な取り組みを今後進めていく必要がある。
・蓄電池の経済性を実現する鍵は、その経済価値を正当に評価・反映する市場制度を作り出すことである。このような環境を整備することで、蓄電池の生産量の増加と価格の減少が想定されるため、蓄電池の経済性が向上すると考えられる。
・一般的な傾向として、蓄電池の市場参入は、周波数調整市場が先駆けとなり、ピークシフト市場が追うと考えられるが、両市場の規模は限られている。潜在的に最も大きい市場は再生可能エネルギー統合だが、ここへの参入は最終段階になるだろう。ただし、電力系統が小規模な地域でのマイクログリッド導入など、各国の状況に応じて蓄電池市場の発展は異なるだろう。
・いずれにしても、蓄電池の系統利用を拡大させるには、技術的に中立的であり、蓄電池の経済価値を正当に反映できる環境が必要である。このような環境は、同時に系統運用の最適化を実現し、再生可能エネルギー導入量を拡大するだろう。

さらに詳しくはこちらをご覧ください。
GSGFからの白書リリース(※英語)
http://www.globalsmartgridfederation.org/2016/01/28/battery-energy-storage-has-a-viable-future-in-grid-operation-support/
 

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